温めますか?冷やしますか?
あなたが今、痛みやしびれを感じているのは
腰ですか?首ですか?肩・膝・足・手ですか?
患部を温めますか?それとも冷やしますか?
スポーツ選手がアイシングする姿が取り上げられるようになり、スポーツによる急性期のケガに対してアイシングをするという考え方は定着しつつあるように感じていますが、生活習慣や日常生活の中で発生したケガや痛みに対してはどうでしょうか? まだまだ温めたほうが良いと考えている方が多数ではないでしょうか?
当院では、 冷やします。
では 「なぜ温めずに 冷やすのか」
ご説明いたします。
「関節の痛みは炎症」
雨戸をイメージして下さい。雨戸はレールにはまっていればスムーズに動きますが、レールから外れると擦れて動きが悪くなります。このように擦れる時は必ず摩擦熱が生じます。痛みのある関節は関節炎や筋肉炎と診断されます。
それはレールから外れた雨戸のように骨と骨とがうまく連結していない関節に摩擦熱がたまり炎症を起こすからです。
「痛みを感じる仕組み」
潤滑不全の関節には摩擦熱が生じます。摩擦熱が一定以上たまると熱に弱いタンパク質は壊れてしまいます。
熱が関節の細胞膜(タンパク質)を壊し、細胞の内容物が細胞の外に流れ出ると化学反応が起こり、連鎖的に破壊が広がると炎症になります。関節を警備する神経は、普段見かけない不審な物質を見かけると「異常事態の発生」のメッセージを脊髄という回路を通して脳に伝達します。脳はそのメッセージを「痛み」として感じとり異常部位を認識する、というのが痛みを感じるしくみなのです。
「痛みを感じなくする方法」
体に異常があってもその情報が脳に伝わらなければ痛みは感じません。そのため医療現場では薬や温熱療法で脳や神経を眠らせる方法をとっています。歯の治療の麻酔注射は神経の伝達を遮断するので歯を深く削っても痛みを感じません。整形外科などでは痛い関節を温めて神経の感度を低下させて痛みを抑えます。
「神経の働きと温度」
神経や脳は基本的にタンパク質と脂肪で構成されており、その感度は温度に大きく左右されます。私たちの神経や脳は涼しい場所では敏感になり、暖かい部屋や風呂では弛緩して眠くなります。腰痛の人は寒い日や生鮮食品売り場などの冷える場所では痛みが増し、暖かい日や風呂で温まると痛みが和らぐことを経験的に知っています。これは温めると感覚神経が一時的に鈍るだけで動きが悪くなった関節(潤滑不全)が治ったわけではありません。そして冷えると痛くなる理由は、感覚神経が敏感になるためで関節の動きの悪さ(潤滑不全)が促進されているわけではありません。
「冷えると痛くなる?!」
使い捨てカイロなどで温めた後、温めた部位はカイロを外せば平常温度に戻ります。すると眠っていた神経が正常な活動を再開して異常のメッセージを脳に伝えるのでまた痛み出します。それを「冷えるとよくない」と思い込んでしまうと、痛む部位をカイロや風呂、遠赤外線やサポーターなどで常に温めようとするようになります。特に腹痛や腰痛などの場合は温める方が多いかもしれません。
温めると気持ちがよく、痛みが和らぐという実体験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。痛くてどうしようもないという場合には、その場しのぎとして温めることもやむを得ませんが、痛みを繰り返す原因となります。
「なぜ温めてはいけないのか?」
いつも痛い部位を温めていると現代医学では治りにくい慢性的な関節痛になります。ひどくなると関節内の柔らかい細胞だけではなく、硬い骨まで溶かして変形性関節症になる場合があります。
あたためる治療には神経回路を鈍らせて一時的には痛くなくなるという効果はありますが、慢性的な関節炎という大きな副作用があります。炎症を温めることはタンパク質を破壊しますが、逆に冷やせばタンパク質を熱から守り炎症を抑えることができます。